HPで管理するのが色々と面倒になってきたので、 とりあえず作成。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
きいたんは体が小さくて、
毛がぱやぱやとしか生えていないので、
よく、1歳と間違えられるんですけど、
先日、2歳になりました。
誕生日パーティーをしてもらったきいたんは、
にこにこご機嫌でした。
「これで、あたちもおねえちゃんよ。」
きいたんは自分をたべこだと思っていますが、
即ち赤ちゃんのことだとは判っていなかったからです。
当然、誰もきいたんをお姉ちゃんとして、
扱ってくれません。
「きいたんは1歳じゃなぁい。
きいたんは、2歳!」
プンプン怒って、文句を言ったんですけど、
お兄ちゃんたちは判ってくれません。
「そんなに違わないじゃない。」
お兄ちゃんたちからすれば、1歳の子も、2歳の子も、
小さいたべこさんなんですが、全然違います。
1年の差は、大きいのです。
「1歳は赤ちゃん! 2歳はおねえちゃん!
きいたんは、おねえちゃん!」
きいたんは、一生懸命怒ったんですが、
どうしても判ってもらえませんでした。
困ったきいたんは、仲良しのルーに相談しました。
「どうちて、きいたんは、
赤ちゃんだって言われちゃうのかねえ?」
きいたんは他の子に比べれば泣きません(けれども、
泣くと決まったらとんでもない大声で泣きます)し、
お喋りも上手です。
お着替えだって、ちゃんと出来ます。
お姉ちゃんとのお約束も守れます。
ご飯だって、自分で食べられるんです。
赤ちゃんでは無いのです。
きいたんの困った顔を見て、
ルーはパタンパタンと尻尾を揺らしましたが、
口の周りをぺろっと舐めると、事も無げに言いました。
「それは、きいたんが小さいからだよ。」
ルーは当たり前の顔をしていますが、
きいたんには、納得いきませんでした。
「でも、ルーだって、小さいよ?」
「ボクはお兄ちゃん! 小さくない!」
途端にルーは怒り出しましたが、きいたんが言うとおり、
ルーだって小さいわんこなのです。
そのルーがお兄ちゃんなのに、
どうしてきいたんは赤ちゃんなんでしょう。
ルーはプンスカ怒りながら、もう一度言いました。
「きいたんは、髪の毛が生えてないじゃないか。
足の爪だってちっちゃいし、ボクとは違うよ。」
きいたんは、ルーの足の裏をみてみました。
大人の犬と同じスパイクみたいなツメが生えています。
きいたんの手は、ずっと小さくて楓の葉っぱみたいです。
お兄ちゃんやお姉ちゃんみたいに大きな物は持てません。
自分の頭を触ってみました。
細い髪の毛が、パヤパヤしてるだけです。
ルーには灰色や黒や白い毛が、ふさふさに生えています。
きいたんは、黙ってお兄ちゃんたちのところにいって、
だっこして欲しいと手を伸ばしました。
そこでお兄ちゃんの一人が抱き上げてあげると、
きいたんは、お兄ちゃんの頭に手を伸ばしました。
きいたんとは違ってしっかりした、
黒くてつやつやの髪の毛が、たくさんはえています。
「おにいちゃん、どうちて、
お兄ちゃんのかみの毛は黒いのに、
きいたんのは、ぱやぱやなの?」
「それは、お前がまだ、小さいからだろ。」
お兄ちゃんの答えを聞いて、
きいたんはがっかりしました。
「どうちたら、ふさふさの毛、生えてくんの?」
「大きくなったら・・・沢山寝たら生えてくるだろ。」
お兄ちゃんは日が変わって何回も寝たらと言う意味で、
沢山といったのですが、
きいたんは長い時間寝れば、
毛が生えてくるに違いないと思いました。
そこできいたんは、その夜早くお布団に入って寝ました。
次の日の朝、きいたんは少しは毛が生えてきたかと、
鏡を見てみましたが、
昨日と同じ、ぱやぱや髪の毛でした。
きいたんはがっかりしてお父さんを起こしました。
「おとうたん、おとうたん、」
「何だよ。まだ早いだろ。」
お父さんの体はきいたんよりずっと大きくて、
きいたんが押しても、ゆらゆら揺れるだけで動きません。
「おとうたん、
どうしておとうたんはおおきいのに、
きいたんは小さいの?」
「そのうち、大きくなるよ。」
寝ぼけ眼のお父さんの手を引っ張って、
きいたんは自分の手と比べてみました。
お父さんの手は大きくて、
きいたんの手がすっぽり入ります。
「おとうたん、
どうして、きいたんの手は大きくないの?」
「そのうち、大きくなるよ。」
言いながら、お父さんは大あくび。
頭をガシガシ掻きました。
黒い髪はボサボサです。
「おとうたん、
どうしてきいたんの髪の毛はぱやぱやで、
ふさふさになんないの?」
「そのうち、生えてくるよ。」
「そのうちって、いつ?」
「そのうちだよ。」
お父さんは、そのうちと言うばかりです。
けれどもきいたんは、
いくら待っても大きくならないのです。
我慢できなくなったきいたんは、大きな声で叫びました。
「そのうちじゃ、わかんない!」
「そのうちは、そのうちだろ。
まったくもう、何でそんなこと聞くんだ。」
叫ばれて、お父さんも困った顔で、
大きなため息をつきました。
赤ちゃんはそんな急に大きくなるわけではないからです。
ゆっくり時間が過ぎていくうちに、
気がつくと大きくなっているものだからです。
けれども、それではきいたんは納得できませんでした。
きいたんは、お姉ちゃんなのです。
赤ちゃんではないのです。
「きいたんは、おねえちゃん!
なんできいたんは、ちっさいの?
なんできいたんの手は、ちみっさいの?
なんできいたんの髪の毛は、ぱやぱやなの?」
でも、きいたんにも判ってきました。
きっと、きいたんがまだ赤ちゃんだからなのです。
きいたんは、やっぱりお姉ちゃんではないのです。
悲しくて、そのまま泣き出したきいたんに、
お父さんも大きな声を出しました。
「そんなの、その方が可愛いからに決まってるだろ!」
お父さんの答えが思っていたのと違ったので、
きいたんは鼻をすすりながら、少し考えました。
「きまってんの?」
「そうだよ。」
「きいたんは、ちみっさくてかわいいの?」
「そうだよ。」
「ちょっかあ。」
それなら、仕方ありません。
可愛いのが一番大事だからです。
お姉ちゃんも、
お兄ちゃんもきいたんを可愛いとほめます。
つまり、そういうことなんです。
自分が小さいことに納得したきいたんは、
また、ご機嫌になりました。
逆にお父さんは周囲の人たちから、
物言いたげな白い目で見られましたが、
特に気にしませんでした。
そんなわけで、きいたんはちみっさいたべこさんのまま、
いつもにこにこ、幸せに暮らしているんですって。