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ジィゾさんは凄い。

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ジィゾさんは凄い。



山羊足の魔術師こと、
カオス・シン・ゴートレッグは寝汚い。
暇さえあれば寝ていると言えば過言だが、
会議中でも船を漕いでいたり、ぼんやりしていたりと、
それに近いことが多々あることは否めない。
挙げ句の果てに、動かない頭でよくわからない発言をし、
周りを蒼然とさせるのも困り者だ。
付き合いの長いオリバー曰く、
「起きたまま寝ている。」とのことだが、
せめて場所を選んでほしいと魔物達は言う。
色々な意味で、何故こうも夢見がちなのかについては、
生活習慣、呪い、ストレス、本人の性質と諸説あるが、
眠りが浅いのと、睡眠時間が足りていないのが、
大体の原因らしい。
自宅に戻り、疲れて寝ているところを、
子供の泣き声で起こされたりもしているようだが、
同時に、ブチ切れて、
赤ん坊相手に怒鳴り散らしたことも伝わってくるので、
あまり周囲の同情は買えていない。

兎も角、会議中だというのに、
その日もカオスは眠そうだった。
「うー ねむてぇ・・・」
彼の希望により、司会は交代制になったため、
役割である人間側との交渉結果を通達した後は、
他と同じく、一議員扱いになっている。
縄張りであるイアールンヴィズは、
元々人間の方で立ち入り禁止としているため、
領地争いに縁はなく、
彼の要望に対しては元より変更希望者がいないので、
話し合いに参加する必要も感じていないらしい。
最終結論がでるまで待って、結果を人間側に通達する。
それが最近の彼の仕事の8割になっている。
司会や書類整理に動いていた時期に比べれば、
だいぶ楽になったはずなのだが、相も変わらず眠そうだ。

どの道、彼の愛娘キィには関係のないことである。
父親にくっついてやってきた小さい人は、
仕事の邪魔にならないよう、
リカルドが用意した控え室で遊んでいたが、
休み時間になったのをいいことにトコトコやってきて、
早速カオスの膝を揺すった。
「おとうたん、おなかへった。
 おやつ、ちょうだい。」
「えー」
準備の良い飼い犬たちと違い、
カオスは子供の為に支度をして移動することはない。
手際よく取り出せるはずもなく、
そんなこと言われてもと、父親は眉をしかめたが、
キィはお構いなしにパシパシと膝を叩いた。
「おやつだして! おやつ!」
頼めば何でも出てくると思っているのだろう。
何の疑いもなく、食べるものを要求する娘に、
カオスは嘆息した。

移動魔法に長ける彼なら、一瞬にして自宅に戻り、
何か持ってくることができるだろう。
そこまでしなくても、
館の主、リカルドに頼めば、何か出してくれるはずだ。
だが、カオスは再び目を瞑り、ぼそぼそと言い訳した。
「あー えーっと、
 お父さんは今、ボス戦だから、手が放せません。」
予想外の回答に様子をうかがっていた周囲は目を見開き、
小さい人も目をぱちくりさせて、父親に尋ねた。
「誰とたたかってんの?」
「睡魔。」

「チャラチャラチャラチャチャラチャチャチャラー
 チャーンチャンチャーチャーチャーラーラー
 チャーチャチャラーチャー
 あ、やばい、負けそう。」
「おとうたん、がんばれー!」
よく分からない歌を歌い始めた父親を、
キィは一生懸命応援し始めた。
その様子に、ぼんやりとオリバーが呟く。
「3かあ。あんな歌、歌ってる暇があるなら、
 さっさとおやつ、出してやればいいのに。」
何が3なんだろうと思いはしたが、そこには触れず、
アセナは首を振った。
「逃げてるんだろ、現実から。」
「ボス戦は、逃げられないのにねえ。」
ため息をついたオリバーが言っていることは、
やっぱりよく分からない。
何がボスなんだろうと人狼が首を傾げたところに、
ジィゾがやってきた。
不思議な歌を歌う父親と、
一生懸命その膝を叩く幼児を見て、
人型機械はそれらしく首を傾げたが、
真っ直ぐにカオスに向かっていった。

「チャラチャラチャラヤチャ・・・」
「チャチャチャーチャーンチャーンチャッチャラー」
「うぉう!」
突然ジィゾから流れた電子音に、カオスが飛び上がる。
「チャーチャーチャラチャチャチャチャラー
 チャーンチャチャチャチャー」
「何だよ、強制終了させんなよ。」
止まらない電子音に、
カオスは口を尖らせて文句を言ったが、
ジィゾは何事もなかったかのように、
次の行動を促した。
「さあさあ、ボス戦が終わって、レベルがあがって、
 クリスタルも無事砕け散ったところで、
 さっさとイベント進めてください。」
「クリスタルは砕け散っちゃ駄目だろー」
「大概、ボス戦の後に砕けてるじゃないですか。」
要は気持ちを切り替えろと、
言っているらしいジィゾに急かされて、
ブーブー言いながらも立ち上がり、
カオスはキィを抱き上げた。
二人とも、そのまま席を立つ。
リカルドが用意してくれた休憩室で、
キィに軽食でも摘ませるのだろう。
手の掛かる魔術師をあっさり動かした人型機械に、
オリバーは感嘆の声を上げた。
「僕、時々ジィゾさんって凄いなって思う。」
「時々か。俺は常にだ。」
何の話がどうなったのか。
滅びた文明を知らない自分からすれば、
お前も相当だよと、やはりアセナは口にしなかった。

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