忍者ブログ

VN.

HPで管理するのが色々と面倒になってきたので、 とりあえず作成。

高性能装備の入手方-欲望の代償、その5。

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

高性能装備の入手方-欲望の代償、その5。




全く、賄賂は有効であった。
自分は毎回手ぶらであたっていたが、
だからこそ、つれない態度をとられ続けたのか、
相手をして貰っていただけ、他より考慮されていたのだろうか?
その辺りはよく分からないが、
後学のため、手土産用意と頭の隅にメモを取る。
同時にユッシの命がけだったとの言葉は、
嘘ではあるまいとも思う。
何にしろ目的を達成できたのは幸いだ。

それに今やるべきことが変わるわけではない。
魔法陣を敷いている間にハンター達の移動は終わり、
予想通りフーゲディアをしとめた辺りで、
ぐるぐる動き回っているのが確認できた。
「結構、広範囲で動いてるお。」
「何をやってるんだか分かればなあ。」
けた違いの高性能探査機に千晴とイーギルは、
期待を込めた視線を送るが、流石に限度があった。
残念そうにユッシが首を横に振る。
「そこまではわからないなあ。
 でも、推して知るべしでしょ。」
ハンターの特徴と言えば、弓矢に寄る遠距離攻撃、
鷹や猟犬などの使役に罠の設置で、
彼らがとるであろう行動は確かに想像に難くない。
ここが最終目的地と判断し、
今度こそ移動の準備を千晴達は整えた。

「よし、じゃあいくか。」
散歩に行くかのようなユッシの言葉と共に立ち上がり、
慎重に来た道を戻る。
3分の2戻ったところで、
イーギルが引いていた騎乗獣の手綱を離し、
合図があるまで待機するよう、愛竜に言いつけた。
「気配は少ない方が、良いからな。」
何度もライクーンの首を撫でながら言い聞かせ、
赤毛の騎士は呼び子笛を握りしめた。
確かに、スモーク単独であれば、
広場に戻るまで3分と掛かるまい。
ハンター達は勿論、
鼻の効く人狼に察知されないためにも、
賢明な判断であるが、
危地から大事な竜を遠ざけようとしているようで、
何となく暗い気持ちに千晴はなった。

『大丈夫、レイナさん達だって、
 むやみに自分の身を危険にさらすような、
 安易で無謀な計画は立てないはずだお。』
全容はつかめずとも、
企画はこの森の専門家によるもの。
幾ら人狼が強くとも、
準備を整えれば対処出来るはず。
むやみに怯える必要はないと己を安心させる。
何か引っかかるような気がしたが、
千晴はそれをただの杞憂と振り払った。
しかし、生死を分かつような場において、
この手の勘は当たるものだ。
そう、幾ら人狼が強くても、人数をそろえ、
準備を整えれば戦えない相手ではない。
にも関わらず、何故ハンター達は秘密理に、
無謀にもたった二人で挑もうとしていたのか。
その理由をもっと考えるべきだったと、
彼はすぐに悔やむことになる。

千晴達が移動する間に、
ハンター達の仕掛けも終わったらしい。
作業場から離れ、そのまま動かなくなったことを、
探知機を見ていたユッシが告げた。
監視対象が隠れたとおぼしき場所から、
離れているのを良いことに移動速度を上げ、
程なく一行は広場の手前で足を止めた。

「おい、隠れるの、ここで良いと思うか?」
「わかんないよ。少なくとも、
 風は向こうから吹いてるから、
 臭いは流れないんじゃないかな?」
ひそひそ声で話すユッシ達を無視して、
千晴はさっさと茂みに身を隠した。
木々の隙間からフーゲディアを倒した広場を見やる。
「こんなことなら、
 遠眼鏡でも持ってくれば良かったお。」
ぶつぶつ文句がこぼれるも、
全容を知らなかった以上、どうしようもない。
運良く広場が明るいので茂みの中でも、
比較的クリアに観察できた。
そのまま、どれだけ時間が経ったのだろうか。
すっかり体も冷えて、
狩りの行方より、風邪の疾患が心配になったころ、
広場の奥、南方より5匹の獣が現れた。
犬にしては手足が長く、
黒い毛皮をまとった四つ足の生き物。

『本当に、きた!』
思わず声を出しそうになって、口を押さえる。
フーゲディアの際と同じ失敗を繰り返してたまるか。
『それにして、も。』
人の気配に気がついておらず、
どんどん近づいてくる黒い固まりは、
思い描いていた魔獣とだいぶ違った。
何も知らなければ、ただの子狼が現れたと思っただろう。
黒い亡霊とも呼ばれるという、
イーギルの言葉が頭の隅をよぎるが、しっくりこない。
「来た、な。」
「けど、」
背後から聞こえる小声で交わされた会話からも、
ユッシ達の緊張と戸惑いがひしひしと伝わってきた。

黒狼と言われるだけあって、皆一様に黒い。
しかし、全体的に柔らそうな毛並みで、
触れてみたい好奇心こそ、そそられても、
死の使いを想像させるような恐怖心をあおらない。
長くとがった口元からは、白く、鋭そうな牙が覗いている。
しかし、どこか笑っているように口角があがり、
生命力に溢れ輝きを湛えた目と合わせて、
愛らしくはあっても、亡霊の如し邪悪を感じさせない。
確かに四つ足ではあるが全体的に細長く、
ふわふわ、ひょろひょろとして、
攻撃性どころか、何処か頼りない印象を覚える。
周囲への警戒心も明らかに薄く、
ぴょんぴょん跳ねながら楽しげに移動するその様は、
どうみても近所の広場に遊びに来た子供。
そうだ、これは成体ではない。
以前、イアールンヴィズでみたティーと同程度の子狼だ。

疑問を口にする前に、一番年かさであろう最も大きい子狼が、
ぴたりと足取りを止め、耳を動かした。
千晴には判らない警戒音でも出したのか、
小さい二匹が怯えるように後ずさり、残りも毛を逆立てる。
見つかったかと千晴は身をこわばらせたが、
どうやら違ったらしい。
大きな子狼は頭を低くし、周囲を警戒しながらも、
仲間たちを引き連れて、
フーゲディアを仕止めた辺りまでやってきた。

周囲に散らばる骨や肉の欠片、血だまり、
大きな角の付いた頭蓋骨。
乱雑に投げ捨てられたままの残骸を前に、
どうやらリーダー格らしい漆黒の子狼は、
ふんと偉そうに前足で地面を叩いてから、
ふっふ、ふっふとわざとらしいぐらい大仰に、
周囲の臭いを嗅ぎ始めた。
しばらくして目的の物を見つけたのか、
バリバリと穴を掘り始め、
くるりと背を向け、勢いよく後ろ足で蹴りあげる。
バチンと、大きな音がして鉄の罠が跳ね上がった。
きゃんきゃんと歓声らしい鳴き声を背に受けて、
そのまま、黒いリーダーは5つの罠をほじくりだし、
ウォンと吠えた。

それが安全を示す合図だったのだろう。
遠巻きに控えていた4匹が、尻尾を振りながら駆け寄った。
耳をぺたりと伏せ、親愛を込めて、鼻を押しつけてくる仲間達に、
リーダーの子も誇らしげに尻尾をピンと立て、
胸を張って応えている。
『兄ちゃん凄いとか、言ってるんだろうな。』
如何にも子供らしい仕草に難しいものはなく、
人狼に造詣のない千晴にも、彼らの思考が理解できた。
危険な罠を全部ほじくりだしてしまえば、
人間の痕跡もちょっと珍しいゴミ程度の扱いらしく、
子狼たちは散らばった鹿の骨をくわえて振り回したり、
臭いを嗅いで回ったりし始め、特段恐れる様子もない。
はしゃぐ仔狼の姿をぼんやりと千晴は観察した。

黒狼と言ってもよく見れば黒一色ではない。
リーダー格は確かに闇夜のような漆黒だが、
二番目に大きい子は灰色掛かった毛並みをしており、
三番目は焦げ茶、四番目は金が薄く斑に混じり、
一番小さいのはソックスでも履いたように前足首が白い。
いつの間にか隣にきていたユッシがぼそりと呟く。
「これは、外れだな。」
「外れ?」
振り返ると、白魔導士が肩をすくめて見せた。
「うん、あれは狩れないし、
 ヨハン君達にも、そのつもりはないみたいだし。」
「あれ、狩れないの?」
半ば条件反射で聞き返して、拳骨を食らう。
「いった!」
「シッ! 大声出すんじゃないよ!」
じゃあ、何故殴った。
頭を押さえて千晴は恨めしい視線をユッシに送ったが、
真っ向から睨み返される。
「人狼に限らず幼体及び、
 子連れの母親に手を出すのは、冒険者の恥。
 資格取るとき、学校で習ったでしょ。」
千晴が狩りの対象を決めることはまず無いので、
意識の外にあったが、言われてみれば確かに、
幼体の不必要な駆除は禁止されており、
人狼といえども例外ではない。
場所が場所だけに大きな声こそ出さないが、
ユッシの機嫌がもの凄く悪くなる。

「ったく、規定でも重罪だし、
 それ以前に人として最低だよ。」
「ごめんなさい。何も考えてなかったお。
 けど、よく考えなくてもそうだよね。」
相手を見定めずに根こそぎ乱獲してしまえば、
種を滅ぼしかねない。
例え駆除すべき危険な魔物でも、
それは人間にとってであって、
大きな自然界の中で見れば必要な存在になる。
密猟者ではあるまいし、好き勝手に狩り荒らすなど、
公式冒険者として許されることではなかった。
大人しく謝ったが、呆れ果てたように言われる。
「本当に判ってる?
 考えてごらん。きいたんみたいな小さい子を、
 儲かるからって殺すのかい?」
想像して、ぞっとした。
身を守るどころか、
傷つけられる危険を想像することすらできないような幼児を、
己の欲望に任せて殺す。
一気に気分が悪くなり、
顔を青くして口元を押さえた千晴を眇で見下し、
ユッシは深くため息を付いた。
「まあ、あれはそこまで小さくなさそうだし、
 まだちゃお君も守られる側だけど、
 よく覚えておきな。
 世の中には、やっていいことと悪いことがあるよ。
 そもそも、きいたんみたいなちみっこには、
 手を出そうとしただけで、
 カオスさんに手加減なくぶっ殺されるしね。」
世界中、何処にいようと、
彼の監視の目から逃げられると思うな。
脅しや忠告ではなく、純然とした事実だと告げられて、
別の意味でも千晴の顔が青くなる。
うちの魔王はこの件に関して容赦がない。
全くない。

不用意な発言のおかげで帰ったら冒険者としての勉強を、
基礎からやり直しさせられることになったが、
何とか気を取り直して、広場に目を戻す。
「この様子だと子供の遊び場になってるみたいだね。
 あっさり見破れる罠しか仕掛けていないところ、
 彼らの興味を引いて、遺留物、
 つまり抜け毛なんかを狙ってるんだと思うよ。」
ユッシの説明に千晴は初めに収集方法として、
抜け毛を集めるよう言われたのを思い出した。
穴場が出来たのではという、紅玲の予測にも当てはまる。
似たようなことを思い出したのか、
白魔導士はふむと頷き、経験からくる感想を述べた。
「こりゃ、人を集めたがらないわけだよ。」
人狼の毛は結構な値段がつく。
しかし、売り物とするにはそれなりの量が必要で、
このやり方では大量に穫れるとも思えない。
戦闘の可能性も、危険度も、収入も少ないとくれば、
仲間をつのう理由がない。
ハンター達の不可思議な行動に納得のいく説明がついて、
陰謀の気配がたちどころに薄れていく。
安心した千晴は大きく息を吐き、
ユッシも少し気が抜けた様子で、ばりばりと頭を掻いた。

「この分だと、うちらの出番はなさそうだし、帰るかね?」
それで良いかと赤毛騎士を振り返れば、
イーギルは納得したとも、していないともいえない、
何とも複雑な顔をしていた。
「俺の勘違いだってことか?
 それなら、それでいいんだ。けど、
 じゃあ何であいつ、でも、」
ぶつぶつと呟きながら、
何度も首を振る彼の気持ちもよく分かる。
慰めるようにその肩をユッシが叩いた。
「何でもない可能性だって大いにあっただろ。
 確かに重装備すぎるとうちも思ったし、
 ヨハン君の態度もおかしかったけど、
 実家でなんかあったんじゃないの?
 良かったじゃないか、なにもなくて。」
大人たちが肩を落とし合う間にも、仔狼達は暢気にふざけあい、
フーゲディアの残骸を振り回した。
一応、真っ黒いリーダーがそれらしく周囲を伺って居たものの、
形ばかりの警戒にも飽きてしまったのだろう。
「オンッ!」
河岸を変えようとでも言ったのか、
一声吠えて、仲間を招集した。
すぐさま3匹の仲間達が呼び声の元に集まったが、
一匹、戸惑うように立ち止まる。

ソックスを履いたようなその小さい子は、
命令を聞かなければならないのが分かっていないのか、
単純に遊び足りないのか、ぺたんと座り込んでしまった。
二番目に大きく、灰色っぽい仔狼が駆け寄って、
鼻で押すように移動を促す。
それでもその子は嫌がるように足を突っ張って抵抗し、
それどころか仲間の待つ方向とは逆に向かって逃げだした。
「ウォン!」
灰色が叱るように吠え、我が儘チビの首根っこをくわえる。
ばたばた暴れるのを、
半ば引きずるようにして二匹が戻る前に、
今度は焦げ茶がふらふら群から離れた。
少し離れた先へ捨てられていたフーゲディアの頭に、
警戒心もなくとっとこ近づいて、
臭いを嗅ごうと鼻先を下げ、更に一歩近寄った途端、
カクリと体が揺らいだ。
「ギャン!」
「フッ?!」
ガクンと見えない糸に引かれたように、
不自然に転び、悲鳴を上げた仲間の元へ、
灰色の子がくわえていたチビを離して駆け寄る。
「ウォン!」
リーダーが警戒の声を上げるも、一歩遅かった。
今度は灰色の子の体が宙に浮き、横に引っ張られる。
「アキャキャン!」
どんもりうった灰色は、すぐ起きあがり、
その場を離れようとしたが、右前足をワイヤーに捕らわれていた。
焦げ茶も逃げられず、ぐるぐるとその場を廻る。
「ヒャーン!」
「キャンキャン!!」
恐怖と驚愕でチビと金斑が泣きわめき、
リーダーの仔も、呆然と立ち尽くす。
そこへひゅっと風を切る音がした。

「危ない!」
「ギャアン!」
弾けるようにユッシが立ち上がったのと、
真っ黒いリーダーが悲鳴を上げたのが、ほぼ同時だった。
「ちょ、ちょっと!」
突然のことに付いていけない千晴をおいて、
白魔導士は茂みから飛び出し、一目散に駆けていく。
「あの馬鹿!」
イーギルが怒声を上げてユッシの後を追い、
釣られるように千晴も付いていく。
「来たれ猛き南海の風、降り懸かる刃を振り払え、
 障壁・ガルフウィンド!」
走りながら詠唱された呪文が、
魔力を突風に変え、原っぱを吹き荒れる。
遠物理攻撃特化の防御魔法は、
次々と飛んでくる矢を吹き飛ばし、
ユッシが広場に躍り出る時間を稼いだ。

草むらから飛び出した白魔導士は、
飛んでくる矢を無視して射られた仔狼に駆け寄り、顔を歪めた。
「毒矢か!」
見立て正しく、急所をずれているにも関わらず、
リーダーは泡を吹いて、ぐったりと動かない。
矢を引き抜こうとする彼の腕に、
金毛混じりの仔狼がうなり声をあげて飛びかかる。
「くっ、」
「グググググググウウウウッ!!」
左手首に小さくとも鋭い牙が食い込み、
痛くないはずがなかろうに、
ユッシは邪魔する仔狼を無視して紫の矢羽をつかみ、
力任せに引っこ抜いた。
「浄化せよ、解毒・ロストポイズン!
 白き癒しの手、回復・ハイヒーリング!」
咬まれたまま、倒れた仔狼の矢傷を両手で押さえ、
極限まで呪文を短縮した白魔法を放つ。
その返礼は鋭い爪の応酬だった。
「グアウッ!!」
「っか!!」
意識を取り戻したリーダーの仔狼が前足を振るい、
ユッシを突き飛ばすようにして逃げる。
同時に左腕に噛みついていた金斑も口を離し、
さっとその場を離れた。
そこへイーギルが飛び込み、槍を振るう。
二匹の人狼はそれぞれ逆の方向へ一飛びに逃げ、
そのまま金斑は大きく距離を置いたが、
黒いリーダーはやはり毒から立ち直っておらず、
跳び退いた先で大きくよろめき、
唸り声をあげながら、一定の距離まで下がるに止まった。
その隙に場に潜り込んだ千晴は、
ユッシの傷口に水薬を振りかけるべく、
金斑にかまれた左腕の袖をめくって青ざめた。
短時間、しかも対魔物用防護服の上からと言うのに、
皮膚が鞭で打たれたように赤く腫れ上がっている。
膝を折った白魔導士を背に庇い、赤毛騎士が怒鳴る。
「なに、やってるんだ!」
「そうだお! 余りに無謀すぎるお!」
「うるせえ!」
小さくても人狼。
彼らから受ける攻撃を無視するなど、
一歩間違えずとも生死に関わる。
基本中の基本に怒鳴られて尚、
ユッシは狼達に目もくれず、森に向かって叫んだ。

「居るんだろ!? 
 隠れたって無駄だ! さっさと出てこい!」
答えのない茂みに、ユッシが杖を振るう。
「邪を許さぬ光、打ちすえよ、聖撃・ライト!!」
放たれた白魔法唯一の単体攻撃魔法により、
ばちん茂みの小枝が跳ね、
顔を歪めた二人のハンターが現れる。
「何を考えているんだ、殺されたいのかっ!?」
「そっちこそ、ふざけるなよっ!
 こんなの、聞いてないぞ!」
四本傷の狩人と金髪の白魔導士の怒声が飛びあう。
「パーティは解散したはずだ! その後のことなど、
 逐一説明する必要があるのか?」
「るっせえ! パーティだろうが、ギルメンだろうが、
 違反行為を見逃す理由がどこにあるんだよ!」
引き絞った弓を降ろすどころか、
鏃を向けて怒鳴るレイナに、
ユッシが人狼そっちのけで噛みつく。
反面イーギルは、予想的中に得意がるわけでも、
ヨハンの裏切りに怒り心頭になるわけでもなく、
どこか泣きそうな顔で叫んだ。
「ヨハン、なあ、お前何やってるんだよ!?」
ハンターたちの陰謀をずっと疑ってきたはずなのに、
ここにきて、信じられないものでもみたかの如く、
赤毛の槍騎士が発した今更で、情けない問いに、
栗毛のハンターは舌打ちで返した。
「なんで、なんで、きちゃったんだよ!
 何で帰らなかったんだ!」
「だって、放っておけないだろ、」
「だから、それが迷惑だって言うんだよ!!」
これまでの横柄で、傲慢な態度はどこへ行ったのか、
おろおろと取り乱すイーギルを、
忌々しげに睨みつけ、ヨハンは唾を吐き捨てた。
「いつも偉そうに兄貴面で余計なことしやがって!
 僕が一度でも、頼んだことが有ったか?
 余計なお世話どころか、いい迷惑、邪魔。
 不快なんだよ! 今すぐこの場から消え失せろ!!」
気弱で、優しげな印象を覆す悪態からは、
本気の憎しみが感じ取れた。
全力の拒否に言葉を失い、イーギルが一歩よろめく。

そこへハッと顔色を変えたレイナが矢を放った。
射られた矢が、争う人間たちからジリジリと距離を離していた人狼の足下を襲う。
「グアウッ!」
パッと動ける子狼たちが逃げ、
漆黒のリーダー格の仔がふらつきながらも上げた威嚇の声を聞いて、
千晴はここが凶悪な魔物との戦場であることを思い出す。
子供とはいえ怒る人狼のそばで、人間同士争っている場合ではない。
優先順位が違う。
戦うなり逃げるなり、安全の確保が先だ。
ぐっと顔を上げ、人狼たちの様子を探る。

金色混じりが落ちつきなく頭を動かし、
一番小さな子はその後ろで不安げに、
「キュンキュン」と泣き喚めいている。
茶色は足を捕らわれたまま、ぐるぐると走り回り、
灰色は嘆くように長々と声を上げている。
罠に捕らわれていない二匹は、
脅かせば逃げるかもしれない。
けれども、まだ毒矢のダメージから回復しておらず、
足下がふらついているのに、
リーダー格の漆黒は毛を逆立てて威嚇を続けていた。
弱りながらも仲間を守ろうとしているこの子狼は、
罠に捕らわれている仲間を見捨てるだろうか?
いや、好戦的で知られるフロティアの人狼が、
幼いからと言って敵に背を向けて逃げると言うのが、
そもそも楽観的過ぎる考えだ。
どれ程のダメージかは解らないが、
毒から立ち直れば、直ぐにでも襲ってくるだろう。
そうなったら、戦うしかない。

「っ! やめろっていってるだろ!!」
罠に捕らわれた灰色に向かい、
無言で鏃を向けたレイナに、ユッシが怒鳴る。
しかし制止に従わず、ハンターは矢を放ち、
それを予測していた白魔導士は魔法を展開し妨害する。
魔法の風に吹き飛ばされた弓矢はねらいをそれたが、
灰色は悲鳴を上げ、啼くのをやめた。
「いい加減にしろよ! 
 子供に手を出すなんて、恥ずかしくないのか!?」
「黙れ! お前こそ、
 自分が何をしているのか判っているのかッ?!
 全滅するぞ!」
怒声を挙げたユッシにレイナが怒鳴り返す。
ただ、攻撃を妨げられただけではなく、
焦燥を含んだ物言いに、一瞬詰まったユッシの隙を突いて、
四本傷の女ハンターは再び矢を放つ。

「ッツ、無駄だって判れよ!」
何度目かの攻撃を弾いた後、ユッシが詠唱を変え、
瞬く間に淡い緑色に輝く半透明で長方形の壁が、
千晴たちを囲うように張られた。
「防御魔法、プロテクトシールド…」
物理攻撃を跳ね除ける魔法の壁、
それ自体は特別珍しいものではない。
しかし、本来必要な詠唱が殆どなく展開されたにも関わらず、
範囲が広いことに千晴は舌を巻いた。
その大きさ、凡そ8m。
普通の白魔法使いであれば、きちんと呪文詠唱して5m、
短縮すれば1m程度であろう。
「こちとら伊達にZempの白魔導士やってねーぞ!
 ハンター二人程度で抜けると思うなよ!!」
相手を牽制するユッシの言葉に虚勢はない。
そう、彼は少数精鋭で知られるZempこと、
ZekeZeroHampの筆頭白魔導士だ。
少し前ではたった5人、
今は紅怜やポールと人数が増えているがそれでも11人。
ギルドとしては極々小規模でありながら、
国が月一回防衛訓練として行う対ギルド戦で、
毎回優秀な成績を収めるZemp中でも所属暦がもっとも長く、
対人戦も慣れたユッシの防衛線を抜けるなど、
並大抵の腕では適うまい。
そうこうしている間にもユッシは別途、呪文を重ね掛け続け、
魔法の壁はどんどん強固になっていく。
それを崩す労力と不利を悟ったのか、ヨハンが弓手を降ろし、叫ぶ。
「イーギル、スモークは!?」
「こ、ここにくる途中、置いてきたよ。」
「じゃあ、早く呼び寄せて、ここからさっさと逃げろよ!」
“立ち去れ”ではなく、“逃げろ”とは。
明確ではないが、人狼の子供がいる以上の危険があることが、
千晴にも判ったのだから、イーギルだって同じだろう。
「じゃあ、お前も…!」
よろよろと、ヨハンのほうに歩み寄った槍騎士の足元に、
冷たく制止の弓矢が突き刺さる。
「こっちにくるな! 来た道から戻れ!」
「何時まで呆けてるんだよ!」
ヨハンとユッシ、双方に怒鳴られて、
はっとした様に足元を見、イーギルは後ずさった。

『罠、か。』
千晴の額にも冷たいものが伝う。
何もないように見えるが、ハンター達は近辺に罠を張り巡らせているらしい。
フーゲディアが掛かった大きな歯が付いた鉄製の罠を思い出す。
あんなものに掛かったら、痛いどころか、
千晴の細い足など骨ごと砕かれてしまう。
また、罠の効果は足止めだけとは限らない。
獲物を捕らえると同時に殺せるよう、殺傷性を高めたもの、
刃を鋭くしたり、毒を塗る場合だってある。
『この辺りには、そこまでの物はないみたいだけど…』
不安に駆られて千晴は周囲を見回した。
先ほど、ユッシや自分がとった無謀な行動を思い出し、
ますます背筋が寒くなる。
慌てて後を追ってしまったが、ここまでは勿論、
すぐ傍にも、罠があるかもしれない。
「こりゃ、簡単に動けないお…」
ハンター達の攻撃は防いだが、
千晴たちも動けなくなってしまった。
背後の子狼達の存在も忘れられない。
チビに大した攻撃力はないかもしれないが、
金斑はそこまで小さくないし、
茶色と灰色も罠に囚われてはいても、死んだわけではない。
何より漆黒のリーダーが怖い。
毒で弱っているとは言え、
死に物狂いになって掛かってこられたら、どうしよう。
確かに成体ではないかもしれないが、
ハンター達と対峙しなければならないのに、
あんなのが背後にいるなんて怖すぎる。

膠着状態にレイナが弓手を降ろし、諦めたように言う。
「ねえ、ここまできたら、
 あんた達だって無事じゃ済まないことぐらい、わかるだろう?
 そいつらはくれてやるから、早くここから出て行ってくれないか?」
悪い話じゃないだろうと言われても、大人しく肯けなかった。
確かに人狼の毛は欲しいが、
あんな毛を逆立てて怒っているのをの貰ったって、
大人しく毛を梳かせてくれるはずがない。
それに無事では済まないとは、どういう意味か。
半ば、混乱気味の千晴と違い、
ユッシは状況をきちんと認識できているらしい。
冷めた表情で淡々と返す。
「それでうちらも犯罪者の仲間入りか。
 ふざけんな。」
「勿論、止めは私たちが刺す。」
気楽どころか、それだけは譲れないとの気迫すら載せて、
レイナは言い切った。
彼女はこの幼獣達を殺す気なのだ。
ユッシがあれだけ怒った禁忌を破ることに、
なんの気負いも感じていない。
「後はなんとでも出来る。
 矢傷であることはすぐにわかるし、
 最悪、なにか咎められるようなことになったとしても、
 あんた達は止めたけど、間に合わなかったとでも言えば良い。
 あながち間違いでもないだろう?
 なにが起こるかわからないのが冒険者の仕事だ。
 買取屋だって、そこまで五月蝿く言わないだろうさ。」
「誰がそんなもん、信じるんだよ。
 連帯責任で資格剥奪、悪くすりゃ牢獄行きがオチだ。」
「じゃあ、どうするの? 魔物をかばって私達と殺し合いでもする?
 白魔導士が? 分かっているだろうけど、周囲には罠を張っている。
 むやみに突っ込んできたら、痛い目を見るよ。
 そもそも、あんたは勿論、騎獣の居ない騎士なんて怖くないし、
 坊やに魔法を使う余地も与える気はない。
 まさか、防御魔法が完全無欠なんて、信じてるわけじゃないでしょう?」
「鳴り矢か。まあ、一寸は手間取るかもな。」
流石とすべきか、当然なのか。
ユッシはレイナの言わんとすることを、正確に読み取った。
「毒矢と言い、ずいぶん大盤振る舞いで準備してるみたいだな。
 ブルズアイなら一本500ロゼはするだろ。」
鏃に施した特殊な加工によって、
周囲の魔力の流れを破壊する矢、鳴矢の存在は、
千晴も知ってはいたが、実際に使われるのを見たことがない。
ユッシが言うように、非常に高額な代物なのだ。
回収すれば再利用も不可能でははないとは言え、矢は消耗品だ。
普通は100本単位で売買されるものであり、
特殊効果のない、ごく一般的なものであれば一束100ロゼ程度だろう。
わざわざ手間と金をかけて特殊な矢を準備するよりも、
魔法で相殺するなり、解除するなりしたほうが、
経済的にも作業的にも効率が良いのだ。

「まあね。でも、だからって無駄遣いしたくないの。」
流石、有能白魔導士は話が早いと皮肉って、レイナは冷酷に笑った。
「このままここに居れば、遅かれ早かれ子供を捜して親が来るから。
 さっきの呼び声を聞いて、もうこちらへ向かっているかも。」
その台詞に少しユッシの様子が変わった。
眉間の皺を深くし、ちらりと千晴を見る。
千晴もがんがん自分の頭を叩きたい衝動に囚われた。
全滅、無事では済まないと、先ほどから仄めかされていたのはこれか。
考えれば当たり前ではないか。
灰色が鳴いていたのは、仲間を呼んでいたのだ。
レイナが言うように、今頃子供を悲鳴を聞きつけた親が、
必死でこちらに向かっているに違いない。

取り付く島もなかった金髪の白魔導士の変化を見逃さず、
畳み掛けるように四本傷のハンターが笑う。
「いくらあんただって、群れで襲ってくる人狼を捌ききれる?
 それより、そいつらの毛皮を持って逃げたほうが得策じゃない?
 なにせ、馬鹿げた保護法とやらで幼獣の毛皮は余計に出回らないからね。
 好事家が挙って飛びつくに決まってる。
 一生遊んで暮せる金が手に入るよ。」
そう囁く声は、レイナの美しさも相俟って悪魔の囁きのように聞こえた。
「それに伴う泥は全部、私たちにおっ被せてくれて構わない。
 良い話だと思うけどね?」
ごくりと、千晴はつばを飲み込んだ。
確かにこんなことでもなければ、
人狼の毛皮など手に入らないかもしれない。
子供に手を出すのは重罪だ。
けれども、その咎は全てレイナ達が負ってくれると言う。
大体、子供とはいえ人狼は魔物だ。
人間同士、争っている場合でもない。
一体どちらの側に付けば良いのか、どうすれば良いのか。
いくら悩んでも、冒険者として経験の少ない千晴には分からない。
このまま人狼と戦闘になったら、
相手が子供だろうが大人だろうが、戦わなければいけないし、
だったら…

逆上せた頭で行った考究は、降って来た拳骨で強制終了させられた。
「…痛ったあ!! だから、何でぶつんだお!」
「あんまり、うちを舐めんなよ?
 大体、死体なんか持ってったら、確実に親に追われるじゃないか。」
叫んだ千晴を完全に無視してユッシは大きく息を吐いた。
「兎も角、これ以上の話し合いは無駄。
 例え、自分の命が危なくても、
 子供見捨てて逃げるような教育をうちはされてない。
 まして、それで利を得ようなんざ、論外だね。
 ベルンの狩人は何時からこんな恥知らずになったんだよ。」
「こいつらは単なる獣じゃない! 化け物だよ!?」
交渉決裂だけではなく、生まれ故郷に対する侮辱にレイナが叫ぶ。
「今は小さくても、すぐに大きくなって、
 それこそ子供も何もかも平気で殺してまわる化け物に育つんだ!
 それを駆除して、なにが悪いって言うの!?」
「言ってもわからないよ、レイナ。」
感情的に喚く兄嫁を制し、ヨハンが吐き捨てる。
「同じ思いをしたことがない、身内を殺されたことがない奴に、
 僕らの気持ちなんか、判るわけがないよ。」
諦念を含んだその物言いに、千晴は胸が詰まるものを感じた。
彼らは殺されたのだ。
人狼に、家族を。

思えばイーギルが話していたではないか。
ヨハンの兄は死んだ。レイナはその妻であったと。
この計画の目的は復讐だ。
彼らはたった二人で、誰もが恐れる人狼に挑み、敵を取るつもりなのだ。
不自然にみえた計画、大量の矢筒も、たった一箇所に絞った罠の設置も、
人狼を誘い込むため入念に準備し、検討した結果だったに違いない。
そしてこの後、どうするのか。
まさか腹いせに子供を殺して終わるはずがない。
親が来ることも彼らはきちんと見越している。
恐らく、一度別れたあとの不自然な動きからしても、
新たな罠を貼っているのだろう。
だが、このままでは自分たちのせいで彼らの計画は無茶苦茶になる。
ヨハンがイーギルに憎悪を向けるのも当然だ。
見事、獲物を罠にかけることに成功し、漸くここまで漕ぎ着けたものを、
付き合いが長い程度のお節介で踏みにじられて堪るものか。

彼らの邪魔をしてはいけない。
今更協力できることはないだろうが、せめて即刻退避すべきか。
血の気が引いていき、足元がふらつくのを感じながら、
失態を取り戻すべく千晴は必至で踏みとどまったが、
ユッシの嘲笑で、目眩はますます酷くなった。
「判らないね。ああ、判らないし、わかろうする気もないよ。」
千晴に理解できたことが、ユッシにできないはずがない。
つまり、ユッシはハンター達の必至の覚悟を知りつつ、
一考だにしなかったのだ。
白魔導士の態度は無神経にもほどがあったが、
彼は彼で怒っていた。
「自分の正義感を振りかざして、
 人に押し付けようとする奴の気持ちなんか、判りたくもないね!
 くだらないんだよ、復讐とか! なんの意味があるんだ!」

馬鹿馬鹿しいと鼻先で笑われて、
頭を殴られたような気がした。
いや、今日だけで実際に何度か殴られているが、
物理的な痛みとは違う衝撃が心を凍り付かせていく。
「意味は、あるお。」
自分でも驚くぐらい、冷たい声が口から溢れた。
「は?」
呆れ果てたようなユッシの侮蔑を感じたが、
千晴にも引けないものがある。
「やられた側の、気が済むじゃないかお。
 いつまでも辛いのを我慢して、鬱々と影を引きずるより、
 敵を取る努力をするほうがよっぽど健全で前向きだお!」
復讐が後ろ向きだなどと、誰が決めた。
いつまでも失ったものについて嘆いたり、自分に嘘をついて過ごすより、
過去の遺恨を晴らしたほうが、よほど心穏やかに過ごせるに決まってる。
そうだ、笑いたければ笑え。軽蔑したければすればいい。
他人からすればくだらない、我儘かもしれないが、
当事者にとっては自分が自分として生きるための、
掛け替えのない拠り所であり、
何事に代えても遂行せねばならない目的だ。

決して消えうることのない憎悪を知らない奴が、
知った顔で口を出すな。

「気が済むからって、誰かを殺して周るのが、
 新しい罪以外に何を生むっていうんだよ!
 そんなの理由にならないだろ!」
「許せないやつを打ちのめしてやりたい。
 理由なんて、それで十分だお!」
「おい、お前ら、やめろって!」
突然始まった仲間割れに、
イーギルが必至の形相で止めに入ってくるが、
こうなったらもう、無理だ。
自分の頭に血が上っており、
正常な判断ができていないことはわかっているが、
正しいとか、間違っているとか、そんなことは問題ではない。
己の内に秘めた決意を侮辱され、黙っていられるほど、
千晴も大人ではない、むしろ年齢的にも全力で子供である。

「じゃあ、聞くけど、
 ユッシンはノエルさんやフェイさんを殺されても、
 復讐しない、したいと思わないって言い切れるの?!
 大事な人を殺されたら、誰だって我慢できないに決まってるお!
 大体、先に手をだしたのはあっちだお!
 自分は人の大事なものを壊したけど、
 やられるのは嫌だなんて、そんなの通じないお!
 やられたことをやり返して、何が悪いの?!」
千晴の代名詞と言えば、大人しく、利口で、
聞き分けの良い「良い子」である。
養母の紅玲が異常性を示唆するほど子供らしくなく、
冷静で癇癪を起こすことなど今まで一度もなかった彼だが、
イーギルが気圧される剣幕で叫び、ユッシの襟首に掴みかかっていった。
背後に傷ついた魔物を控え、一刻も早く逃走すべき状況であればこそ、
協力し合あわなければならないのに、
あろうことか、こんな狩場で敵方とも言えるハンター達に同調し、
味方に食って掛かるなど、千晴自身にも想像すらできなかった。
過剰を通り越して狂気的なまでに激高する、
小さな黒魔法使いの苛烈な反発に、
流石の白魔導士も戸惑いを見せ、口籠る。
それでも彼は何か言い返そうとしたが、
それより早く、狼狽するだけの赤毛騎士を押しのけて、
黄色い閃光が割って入った。
「復讐の何が悪いって?」
ユッシの胸元を掴んだ千晴の手を叩き剥がし、
金髪の少年はエメラルドグリーンに輝く瞳を怒らせて叫んだ。
「そんなの、幾らやってもキリがないからに決まってるでしょ!」

予想だにしない新手の登場に千晴は愚か、
ユッシやイーギル、ヨハン達だけでなく、
人狼の子供たちもぽかんと口を空けた。
「ど、どうしてここにいるんだお、ポール君…?」
「そんなの、どうしてだって良いでしょ!
 ユッシさん、あとそこの、えーと、レイチェルさんでしたっけ?
 援護、頼みます!」
「イーギルだよ! お前、6回は組んでるだろ!」
「終わりの“ル”しか合ってねえ…」
叩かれた手の痛みを他人事のように感じながら口にした千晴の問を一蹴し、
Zempの新米騎士、ポール・スミスは怒鳴るように援護を依頼し、
イーギルに怒鳴り返され、ユッシの気負いを一気に削いだ。

拍手[0回]

PR

コメント

プロフィール

HN:
津路志士朗
性別:
非公開

忍者カウンター