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親の心、子知らず。

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親の心、子知らず。



世界最大の人口を抱える王国、フォートディベルエ。
古代の科学技術を元に、
強固な軍事力を持つソルダットランド。
この二つを除けば、人の国といえるものは少ない。
極東まで行けば龍の住まう国パイロンなどがあるが、
陸伝いに、数ヶ月もかけて海路を行かねばならない。
その合間にある国々も規模は小さく、
数千人単位の町となっていれば、大きい方だ。
十数年前、伝説であった最強の金色竜、
ルーディガーが長きに渡る冬眠から目覚め、
ベルエ王国の首都シュテルーブルが、
壊滅状態に陥ったとき、ソルダットを除いて、
その援護要請にすぐ応えたところがなかった、
最も近いグレートシーランドですら、
動きが鈍かったのは、他国の情勢故だけではなく、
動きたくとも動く力がなかったというのが正しい。
その中で、到着がだいぶ遅れたとはいえ、
数万km先の島国ヤハンから支援隊がやってきたのは、
感謝を通り越して、酔狂としか思えない事件であった。
遙か昔に受けた恩を返すためと、
白魔法使いを中心にやってきた彼らとソルダットの援護、
この二つがなければ、シュテルーブルの陥落は、
免れなかったであろうと言われている。

しかし、ヤハンからきた支援隊への扱いは、
決して良いものではなかった。
これ幸いと最前衛に組み込まれ、
獅子奮闘の活躍の代償として、多くが命を落としたし、
市営に残り、一般市民の救助に当たったものは、
市民を置き去り、
自己の保身を優先した支配層の不興を買った。
竜王が去った後、ヤハンの生き残り達は、
恩賞と称してシュテルーブルの南東、
廃村ミミットの支配権を与えられ、
そのまま地方へ追いやられた。
恩を徒で返すようなベリエ王国のやり方に、
彼らは愚痴一つこぼすことなく、
打ち捨てられた村を開拓しなおし、落ち着くと少しずつ、
戦災孤児を引き取った。
今では村全体が白魔法学園であり、
同時に孤児院として多くの子供達が、
教育をうけながら、生活している。
このようなミミットの歴史は、
シュテルーブルにすむものなら、
誰もが知っていることであるが、
ヤハンの白魔導士がミミットに追いやられたのに、
貴族の反感だけではなく、別の意図があったことは、
あまり知られていない。
意図などあってもなくても、大した違いはないからだ。

ヤハン白魔法学園の総長、伊達総一郎は、
突然の来客を告げられ、酷く驚いた。
地方にあるミミットへの来訪者は、けして多くない。
加えて隣国ソルダットの魔法総支部長となれば、
通常は前もって通告があるものである。
型に縛られることのない知己のスタイルに、
若干の疎ましさと羨望を同時に感じながら、
総一郎は貴賓室へ急いだ。
「相変わらず、人騒がせなお人ですな。
 来はるんなら、ご一報の一つもいただかんと。
 こっちも色々と忙しいさかいに。」
開口一番飛び出した総一郎の嫌みに、
質素というより他ない貴賓室でお茶を飲んでいた来客は、
さして気にした様子もなく、眉を動かした。
「なに、気が向いたんでな。
 少し足を延ばしてみたんだ。」
灰色の髪を僅かに揺らし、
青い目を瞬かせた希代の魔術師は、
相変わらず麗しいとしか、言えなかった。
もう二十歳に近い娘がいるというのに、
若木のような瑞々しさも、
絵画から抜け出たかの如し、整った顔立ちも、
初めて会った時から、何も変わっていないように思える。
流石は傾魔の家系、本来美を解さない魔物ですら、
己の浅ましさを恥じ、頭を垂れると称される、
ソルダットの名家、ヴォルフ家の当主だと、
苦笑するより他ない。
「久しぶりですな。お元気そうでなによりですわ。」
「そちらも息災でなによりだ。」
一変破顔して、握手を求める総一郎に、
ソルダットの総魔法支部長、
ルドルフ・スナヒト・フォン・ヴォルフは、
愛想代わりの皮肉にも、諸手の歓迎にも、
特に表情を変えることなく、ゆったりと応えた。
「そういえば、ニケは元気かい?」
世間話のように問われて、やはりそのことかと、
総一郎は眉を動かす。
「ええ、先日ようやく便りを寄越しましてな。
 なんだかんだ、上手くやってるようですわ。
 忙しくて、黒魔術の勉強までする暇はないそうです。」
「いきなり手厳しいな。
 まあ、彼女の気が変わったら、
 うちはいつでも受け入れるよ。」
「変わりゃしません。
 あれはうちで立派な白魔導士に仕上げましたからに。」
数年前から取り合っている出来の良い生徒のことなら、
絶対に本人の意思なく渡すつもりはないと、
総一郎がはね除けるのに、スナヒトは苦笑した。
「あの子は、こっちに向いてると思うんだけどな。」
本人さえ、その気になってくれれば、
自分が一から黒魔術の全てを教えるのに。
ソルダットの、いやベルエや故郷ヤハンを含めても、
黒魔導士として右の出る者のいないスナヒトが呟くのを、
もったいないと心から思いつつ、総一郎は首を振った。
「その話でいらしたんなら、ご愁傷様でしたな。
 早々にお帰りください。」
白魔法と黒魔法は相入れない。
今更、一からやり直さずとも、
このまま白魔法を学び続ければ、
あの子は思いもつかない高見までいけるかもしれない。

その可能性を考えればこそ、ここは引けないと、
ヤハンの学校長がドアを指し示したのに、
スナヒトは吹き出した。
「やれやれ、嫌われたものだ。
 けれども、まだ帰るわけにはいかないよ。」
本題がまだすんでいない。
柔らかな灰色の髪を揺らして笑うのに、
総一郎は眉をしかめた。
「そんなら、どないしたんです。用もないのにくるほど、
 お暇じゃありゃしませんやろ。」
「うん、大したことじゃない。」
「そない言うたって、
 ブロウブルグからここまでくるには、
 手間も時間もかかりますし。」
ソルダット首都ブロウブルグは、
直線上ではミミットから、さほど遠くはない。
しかしながら、間に存在するフロティア森林の東側は、
黒い亡霊と呼ばれる人狼の住処となっており、
西側は土地の魔力に呼び寄せられた様々な魔物が徘徊し、
北側には魔王と同等の力を持つ人工生物が封じられた、
古代都市イデルがある。
どこも通り抜けるには危険極まりなく、
大枚を叩いて設備をそろえ、移動魔法で繋ぐには、
田舎町であるミミットには魅力がなさすぎる。
それ故に、ブロウブルグから来ようと思えば、
森沿いに大回りする必要があった。

仮にもスナヒトは一国の総魔法支部長であり、
抱えた仕事は多いはずだ。
黒魔術の一派であるにも関わらず、
攻撃を主としないアセガイル系職でありながら、
最強との呼び名の高い彼自らが来たからには、
それなりの理由があるだろうと、総一郎は踏んだ。
「もったいぶらんで単刀直入にお願いしますわ。
 今更、何が起きても驚きゃしません。」
まさか、北方の灰色山脈に居を構えた、
金色竜が動き出したのではあるまいな。
最悪のケースを念頭に総一郎が尋ねると、
ソルダットの魔法支部長は少し、困った顔をした。
「いや、本当に大したことじゃない、
 というか、完全な私用なんだ。」
言い終えると落ち着かなさげに、
スナヒトは居住まいを直した。

何事にも、例え王族相手であろうと動じないと称される、
最強の魔導師に何があったのか。
総一郎は眉を動かし、それなら尚更と強く促した。
「だから、いったい何があったんです?」
「うん、君らがこちらに来てから、
 もう、十数年が過ぎている。
 その時連れてきた子等も、随分大きくなったろうね。」
彼らがどうかしたのかと総一郎はますます顔をしかめた。
本来、国へ置いてくるつもりだった同胞の子供らは、
運良く誰一人欠けることなく成人し、
一人前の公式冒険者として、街で生活しているはずだ。
「あいつらが、何かやらかしましたんか?」
どの子も戦火で親を亡くしたが、それで曲がることなく、
真っ直ぐに育ったと胸を張っていえる。
だが、それと問題を起こさないことは、別のことだ。
中には血の気の多い奴もいる。
「初めて会ったときは、確か6歳だったはずだから、
 今は20、21ぐらいかな。」
何か悪いことが子供たちに起きたのではと、
焦る総一郎の気持ちをはぐらかすかのように、
スナヒトは相変わらずゆったりした口調で話を進め、
本題に入らない。
「彼らの父親のことは、よく覚えているよ。
 ホンマ・カケルに、アイダ・イッセ、
 それからヒジカタ・タケル。
 皆、白魔導士として、ああ、カケルはグラップラー・・・
 君らは拳闘士と呼ぶんだったか?
 どちらにしろ、皆、優秀だった。
 彼らなくして、シュテルーブルを守りきることは、
 出来なかっただろう。
 しかし、幼い子等を、しかもこんな外国に残して、
 さぞ、心残りだっただろうな。」
今更だと、総一郎は思った。
シュテルーブルを守ったことは、
彼らの誇りであり、同時に屈辱でもあった。
覚悟の上だったとはいえ、
仲間の死の見返りに、ベルエの民が何をした?
代償を求め、海を越えて来たわけではないが、
口先だけの賞賛も同情も聞きたくない。

尤も、それはスナヒトも同じ気持ちのはずだ。
彼もベルエ王国の為に、
ソルダット共和国から派遣された軍の選抜隊として、
最前線で戦い、竜王と互角に戦った英雄ではある。
だが、戦後高い名声を妬まれ、
どの派閥にも属しなかったために疎まれ、
ついには暗殺されかけた。
幸い彼は無事だったが、最愛の妻が命を落とし、
以来、彼の一部分が壊れたままであることは、
総一郎も知っている。
だからこそ、ゆったりと懐かしい昔話でも語るかの様な、
スナヒトの口調が勘に障った。
「だから、いったい何なんです?
 さっさと話してくれませんか?」
親しい間柄とはいえ、苛立ちを隠さない総一郎の態度に、
スナヒトは溜息をつく。
「話しているよ、はじめから。」
君こそ、何をそんなに苛立っているのかと、
呆れたように問われ、総一郎は頭を掻いた。
確かにその通りだ。
「兎も角、悪い話しでは、ないんですな?」
「うん。良いかはわからないけれど。」
はあぁと大きく息を吐き出して、
総一郎はお茶を手に取った。

そう、今更なのだ。
十年以上前のことを今、
しかも、同じ様な立場の相手に当たっても仕方ない。
少なくとも、残った者は皆元気で、
スナヒトの話も悪いことではないのであれば、
全容も分からないまま、やきもきすることはないだろう。
「それで、うちの娘は今年で19歳なんだが。」
「ほー もう、そんなになりますかい。
 よその子は成長が早いって言いますが、19ですか。
 さぞかし、別嬪さんになりましたやろな。」
お茶をすすりながら、やけくそ気味に相づちを打つ。
初めからちゃんと話をしているとスナヒトは言うが、
やはり、要領を得ない。
たった一度しか会えなかった彼の妻の笑顔と、
その後ろに隠れていた、
小さな娘を思い出しながら、総一郎は口端を歪めた。
あれから十年以上たっているのだ。
彼女が大きくなっているのは、
自分が年を取ったのと同じように当たり前だ。
「それで、その娘さんがどないしました?」
未だ独り身の腹立たしさも込めて、
乱暴に総一郎が聞くのに、
ソルダットの魔法長はのんびりと言った。
「うん、どうもね、君のところの子に引っかけられて、
 振り回されてるらしいんだ。」

隣国の貴族であり、総魔法支部長であり、
伝説の金色竜ルーディガーと唯一張り合える、
国内外最強の黒魔導士、
ルドルフ・スナヒト・フォン・ヴォルフの娘に、
うちの子が手を出した。
ぶはっと文字道理、お茶を吹いてしまう。

「なんだよ、汚いなあ。」
使うかと差し出されたスナヒトのハンカチを奪い取り、
口を押さえると、総一郎はせき込みながら聞いた。
「ひ、引っかけたって、引っかけたって、
 うちの坊どもが、お宅のお嬢さんを?!」
「うん、その中の一人が。」
ミミットの代表で、白魔法の学校長ともあろう者が、
小指をつきだして訪ねるのに、深くスナヒトは頷いた。
「う、う、う、嘘やろ!?
 うちの坊どもは、どれもそんな器用やないって、
 あれか!? 一太か? 一太郎か!?
 確かにあの子は昔っから、ようモテてって、
 せやかて、そんな軟派なことする子やなかったのに!」
ああ、あんなにしっかりした真面目な子が、
余所のお嬢さんに手を出すなんてと、
慌てふためく総一郎を不思議そうに眺めながら、
スナヒトは首を振った。

「いや? 別の子のはずだが?」
「したら、歩か? ちゃう! ちゃうわ! 
 あの子は昔っから、
 親思いの優しい正直者のほんまにええ子で、
 女の子誑かすような真似、する子やない!
 なんかの間違いです!」
あの子はおっとりとして、
女の子に声をかけることすら出来ないと、
必死で首を振りつつ総一郎が否定するのに、
スナヒトも首を横に振った。
「いや、その子でもないはずだな?」
違う名前の子だったとソルダットの魔法長が言うのに、
総一郎は最後の一人の顔を思い浮かべた。

「敦ーッ! また、己か、あのドアホ!!
 ほんまに余計なことばかりしくさってからに!
 女心の欠片も分からんガサツな癖しおって、
 なにやらかしてくれとんじゃ、あのアホは!!」
「あー そうそう。そんな名前だった。
 ヒジカタ、アツシだっけ。」
予想外とまた彼奴かと言う、二重のショックで、
怒り狂うミミットの学園長を眺めながら、
スナヒトは楽しそうに頷いた。
「まあ、引っかけたって言うか、
 うちの娘が勝手に引っかかったらしいんだけどさ。」
まいるよねえと、他人事のようにスナヒトは語り、
あははと笑った。
「困ったことに、袖にされっぱなしらしいんだよね。」
「も、も、も、申し訳ございませんッ!!!」
15の時に一人立ちして見せろと送り出してからも、
何度か、彼らが問題を抱えて帰ってきたことはあったが、
隣国の総魔法支部長の娘に手を出して、振ったとか、
こんな大がかりな話しは流石に初めてだ。

いやや、なにそれ、もしかして、
外交問題まで発展しちゃったりするんちゃう?
総一郎が顔を青くしたり、赤くしたりするのを、
目を細めて眺め、スナヒトは優雅に立ち上がった。
「まあ、そんなわけでさ、うちの娘、
 ユーリアのどこが気に入らないかは知らないけど、
 もし、気が変わったのなら、
 いつでも挨拶においでって、
 適当なときにでも、伝えて欲しいんだ。」
「分かりました! 
 命に代えても伝えさせていただきます!
 ってか、必ずご挨拶に向かわせます! 
 ほんま、すんません! すんません!
 うちのアホが、ほんまにすんません!!」
望まれたわけでもないのに、
地べたに頭を擦りつけて謝る総一郎に、
スナヒトは不思議そうに首を傾げ、
膝を折って相手にあわせた。
「じゃあ、そう言うわけで、そろそろ帰るね。」
「ハイィッ! こんな鄙びたところに、
 総支部長様直々ご足労ありがとうございました!
 誠に、誠に恐れ入ります! 
 今後とも宜しゅう頼んます!!」
頭を上げようとしない総一郎に、
もう一度首を傾げ、スナヒトは帰路に就いた。
彼の姿が見えなくなるまで、総一郎は頭を下げ続け、
そして、立ち上がると学園の教員全員を呼び集め、
大声で言いつけた。

「ええか、あのアホを今すぐ引っ捕まえて、
 ここに連れてくるんや!
 これ以上、問題を起こす前に首締めあげてでも、
 謝りにいかせなあかん!!」
「えー またぁ?」
教員たちが呆れた声を上げた側で、
小さい者等がわいわいと騒ぐ。
「あつしにいちゃん、なにやったのー?」
「また、なんかやったのー?」
ある程度、大きい子は兎も角、
5・6歳程度の小さい子等では、
外交問題も色恋沙汰も分かるはずもないが、
学園長先生が怒っているのは明白だ。
騒ぐ子供らの目の前で、
早速、例の問題児がいるはずのシュテルーブルに、
捜索兼連絡部隊が向かうことが決まる。
「別にスナヒトさんも怒ってたわけじゃないんでしょう?
 こんな大事にしなくてもいいんじゃ?」
教員の一人が不満を口にしたが、
総一郎はきっぱりと言い切った。
「いいや! 今、なんもなくとも、絶対なんかやる!
 よう覚えとけ、
 敦は必ずワシらの予想の135度辺りを行く!」
「そう言うのって、
 斜め上っていうんじゃないんですか?」
別の教員が不思議そうに首を傾げたが、
学園長は首を大きく振った。
「斜め上なら方向同じやから、まだ何とかなるわ!
 あいつは真逆に限りなく近い辺りを行くから、
 対処がとれんのや!」
ミミットの学園長がここまで言い、
古参の教員が黙って首肯したことから、
新参の教員たちは皆、顔を見合わせ、準備を始めた。

ミミットで教員たちが騒いでいる頃、
シュテルーブルの一角で一人の拳闘士がクシャミをした。
「ヘックチッ!」
そのまま、ブルブルッと身震いするのに、
周りの者が眉をしかめる。
「やぁだ、あっちゃん、風邪じゃないでしょうね?」
「ちょっとー うつさないでよー?」
大丈夫かと隣にいた白魔導士、紅玲が問い、
その隣のアサシン、
ジョーカーが嫌そうに身を仰け反らす。
「んにゃ? なんか、首の後ろがゾクゾクッとした!」
なんやろねと不思議そうに首を傾げた彼、敦に、
相方のユーリが心配そうに声を掛けた。
「大丈夫? 何か掛けるもの持ってくる?」
「いらんわ! たかがクシャミぐらいで大げさな。
 子供やあるまいし。」
欲しかったら自分で用意すると敦は不貞腐れたが、
ユーリは尚も心配そうに眉尻を下げた。
「でも、最近、悪い風邪が流行っているって言うし。」
「風邪は引き初めが肝心だしねえ。」
どうでも良さそうにだが、紅玲も同意するのに、
ジョーカーが羨ましそうに口を尖らせる。
「いいなあ、アッちゃんは二人に心配してもらって。
 ねえ、ユーリさん、
 ボクもなんか寒気がするんですけど?」
「布団に入って寝てたらいいんじゃないかしら。」
あっさりユーリは冷たく突き放し、紅玲も同調する。
「そのまま、永眠するといいと思うよ。」
「畜生wwwwwwwなに、この扱いの差wwwwww」
散々な反応にジョーカーが怒りの声を上げ、敦が笑う。
「当然の結果やろー ほんま、アホやなジョカは。」
「きぃぃ! ユーリさん! 
 こんな男のどこが、ボクより良いんですか!」
ますます怒るジョーカーに、呆れた顔で紅玲が答える。
「いや、これはあっちゃんがどうとかいう以前に、
 ジョカさんが駄目だと思う。」
「そうねえ。」
ユーリも頷くのに、ジョーカーはますます憤った。
「おかしい! この格差は絶対おかしい!」
怒るアサシンに、皆が笑う。
紅玲も同じく笑っていたが、
ふと、何か感じたように尋ねた。
「でもさ、あっちゃん、本当に大丈夫?」
「ん? ぜんぜん平気やでー!」
白魔導士の問いに、元気よく敦は答えたが、
数日後も、彼が元気かは定かではない。

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