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新聞の話題。

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新聞の話題。



「アルファベットを全部使った名前に、
 改名した人がいるらしいですよ。」
新聞を読みながら、紅玲が言う。
「どんなの?」
早速フェイヤーが興味を示す。
「ABCDEFさんとかなんとか。」
自分から話を振っておいてやる気のないことに、
紅玲は記事を読み直そうともしない。
「あいうえ夫さんみたいな。」
「何でそんな名前にしたんだ。」
カオスがどうでも良さそうな相づちを打ち、
鉄火が訝しげに尋ねる。
「『世界はアルファベットで表示されている。
  だから全てのアルファベットを使った私は、
  世界を手に入れた』だそうですよ。」
その回答を聞いて、全員、
紅玲のやる気がない理由を理解した。
「漢字はどうなるのよ。」
「ひらがなもカタカナもあるしな。」
フェイヤーと鉄火が即行で突っ込みを入れ、
カオスが膝の上のキィをおろす。
「私は世界を手に入れた。ただし、東洋圏以外!
 って、ことだな。」
「こっちだって、
 各国独自の文字が幾つもあるでしょうがよ。」
26文字を制覇した如きで、世界を手に入れたとは、
大げさなことだと師弟は肩をすくめあう。
「しかし、この理論だと、
 僕らの故郷は当分安泰だね。」
漢字全てを繋げるのは相当大変だ。
フェイヤーが笑い、鉄火が軽く小首を傾げた。
「名前じゃねえけど、
 仮名全てを使った歌があったろう。」
「ああ、いろは歌ね。」
神話以前の古来から伝わる古歌の名前に、
紅玲が頷き、カオスが軽く眉を動かす。
「いろはにほえど ちりぬるを、
 わがよたれぞ つねならん。
 ふゆのおくやま けうこえて、
 あさしゆめみじ、よいもせずだっけか?」
彼が歌い上げた古歌は、
ヤハン人であれば誰もが知っている。
だが、全て暗唱できるかと言えば、別の話だ。
「よく、知ってますね、師匠。」
素直に驚いた紅玲に、カオスは首を横に振った。
「いや、聞きかじりだから、
 微妙に間違ってるかもしれん。」
覚えようとして覚えたものではないらしい。
鉄火が眉間にしわを寄せながら指摘する。
「ふゆじゃなくて、ういじゃなかったか?」
「ういってなんだよ、ういって。」
「俺も忘れた。」
子供の頃に習ったきりだと黒髪の騎士は天井を見上げ、
習った覚えすらないと魔術師は口端を歪めた。
「習ったことがないのに、どこで覚えたんです?」
「どこだったけかなー」
不思議そうに問う紅玲に、カオスは珍しく真面目に、
考える様子を見せる。
「曲で覚えたんだよな。どこでだったか?」
色は匂えど 散るぬるを
我が世誰ぞ 常ならん
うゐの奥山 今日越えて
浅き夢見し 酔いもせず
改めて、魔術師がなかなかの美声を披露する。
古い言い回しに、故郷を思い出したのか、
鉄火と紅玲が複雑な表情をし、
フェイヤーが困ったように下を向く。
「どんな由来のあるものなのか、僕には判らないけど、」
言いながら、足下のキィを見やる。
「きいたんが、踊っているのは、
 なにか、関係あるかな?」
いつの間にか、小さい人が歌にあわせて、
手を頭上でヒラヒラさせている。
「・・・なに、その盆踊り。」
紅玲が呆然としつつ尋ねるが、
キィは素知らぬ顔で踊り続けている。
「なにか、歌と踊りに繋がりがあるんじゃないの?」
フェイヤーが関係の可能性を問うが、
カオスから、それらしい反応は返ってこなかった。
「我が娘ながら、あいつが考えていることは、
 さっぱり判らん。」
「それでいいのか、お前。」
ボリボリと頭を掻く父親に、鉄火が突っ込む。
古歌と踊りは、繋がっているのかいないのか。
それは小さい人にしか判らない。

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津路志士朗
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