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きいたんは、何でも知っている。

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きいたんは、何でも知っている。



現在最高の人口を抱える国家フォートディベルエの首都、
シュテルーブルに登録している個人ギルドは、
星の数ほどあるが、その中の一つ、
ZempことZekeZeroHampには、
実在すれば世界最強と言われる魔王の中の魔王が、
何故か居候している。

元を正せば、ギルド員の一人、
彼の弟子である白魔導士の紅玲に、
仕事の間だけ娘をみてもらう為だったのだが、
居座る時間は日に日に延びていき、
今では親子揃って、すっかりギルドの一員である。
キィはこの歳の子供にしては珍しく、人見知りをしない。
にこにこ嬉しそうに笑いながら甘えられれば、
誰だって悪い気はしない。
ギルドメンバー総出で可愛がり、
子供に興味のないユッシやジョーカーまで、
暇さえあれば、相手をしている。
そうして、大人と一緒に居る時間が長いせいか、
見かけの割に口はたいそう達者になり、
幼児とは思えない知識を蓄え始めた。

ある日、ジョーカーとアルファが、
キィをつれて買い物に出かけた時のこと。
性能だけでなく見かけもよいと噂の防具屋を、
見に行った帰りに、今まで来たことのない公園を通った。
キィは当然大喜びで、ちみちみと公園内を走り回り、
鉄棒にぶら下がり、滑り台を滑り、
一瞬の隙にジャングルジムを半ばまで上って、
兄ちゃん二人を慌てさせた。
大急ぎで下まで降ろし、
落ちたら危険、まだ早いと言い含めれば、
普段、もっと高いところに上っているとの証言が取れた。

「きいたんは、あみあみをのぼんのが、とくいなんだよー
 あちしお兄ちゃんと、
 いつもてっぺんまで、のぼってるよー」
「アツシ君めー なんて考えなしなんだろ!
 帰ったら、うんと叱っておかなくっちゃ!」
己を棚上げして憤るジョーカーの袖を、
空気を読まずにアルファが引っ張った。
「ねえジョカ君、見てよ、あれ。」
「何をですか!? 今、ボク、怒ってるんですけど!
 その怒りを吹き飛ばすような、
 美人のお姉さんでもいましたか!?」
怒る理由を考えれば、
美女の有無で吹き飛ばすものではない。
ギルドの主格、鉄火かクルトあたりがいたら、
軽いお説教を食らうに違いなかったが、
幸い、アルファはそこまで厳しくなかった。

「そうじゃないけどさー 見てよ、あそこ。」
そもそも、彼は見つけた物に完全に気を取られていて、
ジョーカーの話をろくに聞いていなかった。
「ベンチの上に、あんなに沢山、
 たこさんウィンナーが並べてあるよ。
 もったいないねえ。 誰があんなことしたんだろ?」
「誰か、お弁当でもこぼしたんじゃないですか?」
言われて見てみれば、
確かに大量の赤い物がずらりとベンチの上に並べてある。
アルファは首を傾げ、ジョーカーは腕を組んだ。
何しろ、一つや二つではないのだ。
軽く十を越している。
弁当を丸ごと一つ落としたとしても、
そんなに入っていないだろう。
そもそも何故、わざわざ加工したウィンナーを、
ベンチに並べる必要があるのか。
「嫌いな子が揃って捨てていったのかな?」
「集団タコさんウィンナー投棄事件?
 しかし、あんなにあるんじゃ、
 ちょっとあり得ないですよ。」
これと言った予想を立てられない二人の横で、
当然のようにキィが言う。

「ちがうよー あれは、ざくろのおはなだよー
 タコさんじゃないよー」
意外な指摘にええっと驚いて、振り返った兄ちゃん達を、
幼児はフンと鼻息荒く笑い、別方向を指さした。
「あっちの木から、誰かが拾ったんだよー」
言われた方を見てみれば、
確かに赤い花が咲いている木が生えており、
似たような花弁がいくつも落ちている。

「なんだ、花か。」
「遠目からじゃ、
 タコさんウィンナーにしか、見えないねえ。」
平凡な結果に、ジョーカーは口をとがらせ、
アルファは感心して何度も頷いた。
近寄って手に取ってみれば確かに花だが、色も形も、
弁当に入っているタコ型ウィンナーにそっくりだ。
面白がった誰かが、ベンチに並べたのだろう。
「凄いや、きいたん。よく、すぐ判ったね!
 僕、ちっとも、判んなかったよ。」
見事に正体を見破った小さい人を、
アルファが抱き上げる。
褒められて、キィは嬉しそうにプププと笑った。
「きいたんは、前にも、見たことがあるんだよー
 お姉ちゃんが、教えてくれたよー」
「そういえばきいたんは、
 沢山、花の名前を知ってましたな。」
以前、同じようにキィに教えられたことがあると、
ジョーカーが口にする。

「クレイさんが暇を見て、
 色々吹き込んでるんでしょう。」
「凄いねえ。きいたんは、本当に凄いよ。」
納得してジョーカーは頷き、
アルファは興奮気味に、キィを抱えてくるくる回った。 
面白がって、キィはキャッキャと笑い声をあげたが、
ジョーカーがアルファの首根っこを掴んで、
無理矢理やめさせる。
「ちょっと、なにすんのさー」
「それはこっちの台詞ですよ。
 きいたんごと転んだら、どうするんですか。」
そんなヘマはしないとアルファはぶーぶー言うが、
そんなドジを踏むのが彼という男なのだ。
問答無用で強制終了とし、
ジョーカーは二人を連れて家に帰った。

家に帰ると、他にも複数人が戻ってきていた。
その中に幼児の父親が含まれており、
早速、アルファがキィの偉業を報告する。
少し興奮気味に語られたそれを、
カオスは耳の穴をほじりながら、聞き流した。
「ああねー そういうことも、あるかも知らんな。」
「ちょっとー 
 お父さんでしょ、もっと娘の成長を喜んでよ!」
淡泊な反応にアルファが怒るが、
その他も似たり寄ったりで、いまいち反応が鈍い。
「きいこが賢いのは、皆、知ってしなあ。」
眉間に皺を寄せ、
スタンが歩き疲れて眠そうなキィを抱き上げる。
どこから見ても、不機嫌MAXな大男だが、
当人はただ、返事に困っているだけである。
口べたな彼の後を、ポールが続けた。
「今更、花の名前程度じゃ、驚きませんよ。
 きいたんは葉っぱだけで植物の名前が判るんですよ。」
「えっ、そうなの?」
歳を考えれば名前を知っているだけで上等であるのに、
花や実ではなく、葉で判別するとは。
驚くアルファの後ろで、
ユッシとノエルの幼なじみコンビが、
机に頬杖をついたまま言う。
「うちはレモンの黄色はビタミンCで、
 人参の橙はカロチンだとかって言ってるのを聞いた。」
「俺は土壌の成分がアジサイの花に与える影響について、
 説明を受けた。」
「あたしゃ、鷲と鷹の違いについて聞きましたね。」
「わいはジンベイザメとタツノオトシゴが、
 卵生なのに体内育成する話を聞いたで。」
祀と敦も続けて言い、
最後にヒゲが大きく手を挙げて占めた。
「ワシは何故、空が青いのかを説明されましたが、
 さっぱり判りませんでしたっ!!!!!!!」
「きいたん以下か、お前。」
幼児に教えられたあげく、理解できないとは何事か。
ふがいない事実を胸を張って告知する相方を、
ジョーカーは一刀両断に切り捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

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